多様性を活かした組織変革~人手不足社会を生き抜く羅針盤~

はじめに

 当誌レポートⅠ「2023年度新卒者採用に関する動向調査」では、本県の事業者が新卒採用に苦戦し、人手不足の課題を抱えていることが浮き彫りになった。本稿では、賃金アップやミドル・シニア層への広がりなど活性化の動きが見られる転職市場の動向を概観し、中小企業におけるキャリア採用等を活用したイノベーションの取組みについて考察する。

目次

  1. 人口減少が招く人手不足
  2. 雇用流動化の効果と転職市場
  3. 雇用流動化を自社に活かす
  4. 多様性を活かした変革

レポート一部

1.人口減少が招く人手不足

  • 想定を上回る人口減少により、人手不足は将来にわたって深刻な状況が続く。

 労働市場を語る上では、人口問題が欠かせない。2023年2月28日に厚生労働省が発表した人口動態統計の速報値によると、2022年の年間出生数は79万9728人となり、1899年の統計開始以降、初めて80万人を割った。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が2030年に80万人割れと推計した減少ペースを8年も前倒しした衝撃的な数値に、将来の日本を悲観する声も多く挙がったことであろう。
 熊本県においても、人口減少の課題が重くのしかかる。2020年から2045年にかけて、労働力の主力層である本県の生産年齢人口は24%も減少する予想となっている(図表1)。このような人口減少社会・労働力減少社会では、人手不足の状況は将来にわたり更に深刻化し、国や地域の経済縮小に拍車をかけると考えられる。

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