我が社もできるエンゲージメント向上の取組み ~人的資本経営における評価項目の見える化~
はじめに
A社は、経営理念に「世の中を変えるイノベーション」と「従業員を大切にする家族経営」を掲げ、消費者からの知名度が高く、就職を希望する学生も多い人気企業であった。しかし、最近現場では、法会計制度対応など新たな業務は増える一方、残業はしづらく、若手指導の時間や職場内での雑談も減り、1on1ミーティングでは先輩の「昔の武勇伝」の話を一方的に聞くといった状況となっている。若手にとっては「言っても無駄」といったあきらめの風潮が現れ、若年層の離職率が徐々に増加傾向となりつつある―――
上記事例は、個人と組織の関係性の問題が従業員エンゲージメントの低下を招いたことに起因している。本稿では、「人」の重要性がますます高まっていくなかで、これからの人的資本経営における従業員エンゲージメントの評価項目と改善プロセスについて考察する。
目次
- 従業員エンゲージメント管理の必要性
- 従業員エンゲージメント管理の実践
- 改善取組みの具体例
レポート一部
1. 従業員エンゲージメント管理の必要性
- 人材版伊藤レポートでは、「従業員エンゲージメント」を個人・組織の活性化の項目としている。
- 従業員エンゲージメントは、組織の目指すゴールに対する「自発的貢献意欲」を意味し、その構成要素には「理解度」「共感度」「行動意欲」がある。
- 単なる従業員満足度の管理から、経営理念に基づく企業活動に対するエンゲージメントの管理へシフトすることが必要である。
(1)人的資本経営における従業員エンゲージメント経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~人材版伊藤レポート2.0~」では、従業員をコストとして消費される「資源」ではなく、企業価値創造の源泉としての「資本」ととらえ投資の対象とした。そのなかで、経営戦略と人材戦略との連動(視点1)を重視するとともに、企業が取組むべき個人・組織の活性化の項目として「従業員エンゲージメント」(要素④)を位置付けている(図表1)。