政府目標達成には道半ば ~熊本県内企業の女性管理職登用状況~
はじめに
世界経済フォーラムが2023年6月に発表したジェンダーギャップ指数において、日本は146ヵ国中125位であり、女性活躍、男女共同参画が他国と比べ遅れている。中でも、女性管理職登用率の低さが男女間の格差を広げる要因の一つであり、政府は女性管理職の割合を2020年代の可能な限り早期に30%程度となることを目指している。さらに、「女性版骨太の方針2023」では、プライム市場に上場する企業の女性役員の割合を 2030年までに30%以上にする目標を掲げた。
熊本県内に目を向けると、地域からジェンダー平等研究会が2023年3月に発表した「都道府県版ジェンダーギャップ指数」において、「経済分野」は10位となった。一方で、「企業・法人の役員・管理職」の項目では14位と前回調査の2位から後退している。
そこで、当研究所では「第128回熊本県内企業業況判断調査」の特別テーマとして、県内主要企業を対象に女性の管理職登用について調査を行った。以下はその結果である。
目次
- 女性管理職登用率について
- 2030年における女性管理職登用率の目標について
- 女性管理職登用に対する課題
- 女性管理職登用のメリット
- おわりに
レポート一部
管理職に占める女性の割合(以下、女性管理職登用率)は、「0%」が38.0%と約4割を占めた(図表1)。加えて、政府が目標としている「30%以上」と回答した割合は6.3%と1割にも満たず、政府目標の達成には遠い現状が明らかとなった。
全国を対象とした調査結果と比べると、今回調査の方が「0%」の割合は低かった。言い換えれば、熊本県内企業の方が、女性を一人でも管理職に登用している割合が高いということになる。しかし、「30%以上」の割合は、今回調査の方が低かった。
女性を一人でも管理職に登用している割合(「10%未満」+「10%以上20%未満」+「20%以上30%未満」+「30%以上」)を業種別で見みると、個人サービス業で95.5%、小売業で84.0%と他の業種と比較して高い(図表2)。特に、個人サービス業では医療・福祉業や宿泊業で高い割合だった。なお、医療・福祉業では「30%以上」と回答した企業も多かった。女性社員が比較的多い業種であることが一因と考えられるが、自由回答でも「女性の視点が不可欠である」などの声が聞かれた。一方で、卸売業で39.3%、食料品以外の製造業で48.7%と低い。自由回答では、女性社員の数が少ないことや業種的に女性の職種が限られていることを要因に女性の管理職登用が進まないとの声が聞かれた。
従業員規模別では、「300人以上」で81.8%と女性管理職を登用している割合が高い。
調査概要
対象企業:県内主要企業 536社
調査期間:2023年8月1日~8月18日
回答企業:208社