社会課題解決における「エコシステム」
はじめに
SDGsの17のゴール、カーボンニュートラルによる産業構造変化、DXによる第4次産業革命など世界共通の社会課題は多岐にわたる。熊本の地方経済においても、人口減少に伴う人手不足、物価高と価格転嫁、さらにTSMC進出に伴う対応など地域社会の課題は山積している。そのような社会課題の解決手法として「エコシステム」という言葉をしばしば耳にするようになった。企業が生態系に似た連携により全体として価値を創造して社会課題を解決しているケースが多いのではないかと思われる。本稿では「エコシステム」と言われている連携の仕組みを分類し、それぞれの特徴を整理の上、環境負荷軽減を目的としたサーキュラーエコノミーに関する最新の取組みを紹介する。
目次
- エコシステムとは
- エコシステムの3分類
- オランダにおけるサーキュラーエコノミー型エコシステム
レポート一部
1.エコシステムとは
- エコシステムは生態系に由来し、社会課題解決などを目的として、ステークホルダーが相互に関わり合い、経済的にも共存し共生する関係を構築している。
(1) 生態系に由来
エコシステムという言葉は本来、生態系に由来している。植物が光合成を行い成長し、虫や草食動物がそれを食べ、さらにそれらを捕食する動物、その死骸を分解する微生物が存在するなど、自然界の生物は相互に食物連鎖に依存して共存し共生している。もし、一つの種が欠ければ生態系が別の形態に形を変えることになる。(図表1)。このように、ある地域や空間などの領域において生き物や植物が、互いに依存する生態系をエコシステムと呼ぶ。
ビジネスにおいて使われるエコシステムは、ある社会課題を解決する等の目的のため、企業や個人、 大学や行政などあらゆるステークホルダーが、それぞれの技術や知識といった強みを活かしながら協力して、共存し共生を図る関係性を表している。共存の在り方は自然界と同様に多岐に渡るが、今回はその目的や活用する資源、ステークホルダーによって3つに分類し考察する。