価格転嫁の実現は今が好機!! ~国内旅行の動向に見る観光関連産業における成長の可能性~
はじめに
2023年5月の新型コロナウイルス5類移行に伴い、「アフターコロナ」への意識の変化や「リベンジ消費」の盛り上がりが見え始めている。特に、コロナ禍で控えていた旅行やレジャーに出かける人は多く、観光関連産業では消費の回復が見られる。
一方で、消費者物価指数は上昇し、2023年1月には約40年ぶりの高い上昇率となった。その後も高止まりが続いており、日常的な消費では節約志向の強まりがうかがえる。
この状況を踏まえ、今回のレポートでは、食費などの日常的な支出をさす「基礎的支出」と旅行や高額商品などの非日常的な支出をさす「選択的支出」に分けて消費の動向を分析し、その結果から観光関連産業の価格転嫁の可能性を考える。
目次
- 基礎的支出の動向
- 選択的支出の動向
- 「リベンジ消費」を価格転嫁の好機に
レポート一部
1.基礎的支出の動向
- 基礎的支出である「日常の食費」では、物価高を背景とした節約志向が強まっている。
- 「食料」消費額は、ややマイナスであるものの大きな落ち込みは見られない。
- 物価の変動を除いた実質賃金の低下が、基礎的支出における消費意欲の下押し圧力になっている。
(1)「日常の食費」の支出見通し
基礎的支出の動向を探るにあたり、「日常の食費」に着目し分析した。当研究所が2023年5月に実施した消費予報調査の結果を見ると、「日常の食費」の支出見通しDI※は大きく低下した(図表1)。
なお、支出を減らす理由では「物価の上昇」や「今後を見据えた節約」の割合が高く、基礎的支出では物価高を背景とした節約志向が強まっていることがわかる(図表2)。